フェライト磁石は、酸化鉄を主原料とするセラミック磁石です。比較的安価で錆びにくく、耐熱性にも優れていることから、スピーカーやモーター、自動車部品など幅広い製品に使われています。一方で、ネオジム磁石に比べると磁力が弱く、衝撃によって割れたり欠けたりしやすいという注意点もあります。

この記事では、フェライト磁石の仕組み、メリット・デメリット、ネオジム磁石との違い、製造方法、主な用途、取り扱い時のポイントを分かりやすく解説します。

フェライト磁石

フェライト磁石とは?

酸化鉄を主原料とするセラミック磁石

フェライト磁石は、酸化鉄(Fe2O3)を主成分とし、炭酸バリウムや炭酸ストロンチウムなどを加えて焼き固めた「酸化物磁石(セラミック磁石)」の一種です。ネオジム磁石のような希土類元素を主成分としないため、原料を確保しやすく、価格が比較的安定している点が特徴です。

非常に強い吸着力が必要な小型用途より、コスト・耐食性・耐熱性のバランスを重視する用途に適した永久磁石です。

フェライト磁石ができるまで

日本で開発され、世界に普及した磁性材料

フェライト材料は1930年代に東京工業大学の加藤与五郎博士と武井武博士によって開発されました。その後、1950年代以降にバリウムフェライト磁石やストロンチウムフェライト磁石として発展し、工業用の永久磁石として世界中に普及しました。

近年では、ランタンやコバルトなどを添加した高性能フェライト磁石も開発され、レアアース使用量の削減を目的としたモーターへの採用や研究も進められています。

フェライト磁石のメリット

メリット1 比較的安価でコストパフォーマンスが高い

酸化鉄を主原料とし、大量生産にも適しているため、比較的安価です。ある程度の大きさを確保でき、非常に強い磁力を必要としない用途では、コストを抑えやすい選択肢です。

メリット2 錆びにくく、表面処理を必要としないことが多い

酸化物を主成分とするため耐食性が高く、一般的には防錆目的のメッキを必要としません。湿気のある環境でも比較的使いやすい磁石です。

メリット3 ネオジム磁石と比べて耐熱性に優れる

ただし、使用可能温度は材質やグレード、磁気回路によって異なります。実際に使用する際は製品仕様の確認が必要です。

フェライト磁石のメリット

フェライト磁石のデメリット・注意点

デメリット1 ネオジム磁石より磁力が弱い

  • 同じ大きさで比較すると、ネオジム磁石ほど強い磁力を得にくい
  • 小さなスペースで強い吸着力が必要な用途には不向きな場合がある

デメリット2 衝撃で割れたり欠けたりしやすい

  • セラミック(陶器)に近い性質を持つ
  • 硬い一方で脆く、落下や強い衝撃には注意が必要

組み立てや運搬、取り付け時には、磁石同士を勢いよく吸着させたり、硬い場所へ落下させたりしないよう注意しましょう。

デメリット3 低温環境では磁気特性に注意が必要

  • 低温側で薄物では磁気特性が変化する性質がある
  • 寒冷地や冷凍機器などで使用する場合は、事前に仕様確認が必要

フェライト磁石とネオジム磁石の違い

フェライト磁石と比較されることが多いのがネオジム磁石です。どちらが優れているかではなく、必要な磁力・使用環境・コストによって適した磁石が変わります。

項目フェライト磁石ネオジム磁石フェライトの特徴選ぶ目安注意点
磁力△◎同サイズでは比較的弱い大きさを確保できる用途小型・強磁力ならネオジム
価格◎○比較的安価コスト重視仕様で変動
耐食性◎△※錆びにくい湿気のある環境ネオジムは表面処理が重要
耐熱性○△〜○※比較的高温に強い温度が上がる用途グレードごとに確認
衝撃△△割れ・欠けに注意丁寧な取り扱いどちらも衝撃に注意

※ネオジム磁石の耐食性・耐熱性は、表面処理や材質グレード、使用条件によって異なります。表は一般的な特徴を把握するための目安です。

フェライト磁石はどのように作られる?

フェライト磁石は、粉末原料を成形し、高温で焼き固めるセラミックスに近い工程で製造されます。主な流れは次のとおりです。

  1. 原料(酸化鉄・炭酸バリウムまたは炭酸ストロンチウム)を混合
  2. 高温で仮焼成
  3. 粉砕して微粒子化
  4. プレス機で成形
  5. 高温で焼結
  6. 加工・形状調整
  7. 着磁
  8. 検査・出荷

成形時に磁界をかけて結晶の方向をそろえたものは「異方性フェライト磁石」と呼ばれ、磁界をかけずに成形した「等方性フェライト磁石」よりも高い磁力を発揮します。

フェライト磁石の主な用途

家電・音響機器

  • スピーカー
  • 洗濯機や空調機などのモーター
  • 各種吸着部品
  • 玩具・雑貨品など

特にスピーカーやモーターなどでは、価格と性能のバランスの良さを活かして幅広く利用されています。

自動車・産業分野

  • 自動車のスターターやオルタネーター
  • ワイパー、パワーウインドウ、パワーミラーなどの車載用小型DCモーター
  • 一般産業用モーター
  • 複写機やレーザープリンターなどのOA機器部品

強い磁力だけでなく、耐食性やコストとのバランスが重視される用途で、フェライト磁石の特長が活かされています。

自動車・産業分野イメージ1
自動車・産業分野イメージ2
内部構造

フェライト磁石を長く使うためのポイント

  • 落下や強い衝撃を避け、割れ・欠けを防ぐ
  • 磁石同士を勢いよく吸着させない
  • 寒冷地や冷凍設備など低温環境では、用途に適した仕様か確認する
  • 実際の使用温度や形状、必要な磁力に合わせて適切なグレードを選ぶ

まとめ

フェライト磁石は、酸化鉄を主原料とする永久磁石です。「比較的安価」「錆びにくい」「耐熱性に優れる」というメリットがあり、スピーカーやモーター、自動車部品など幅広い分野で使われています。

一方で、ネオジム磁石より磁力が弱く、セラミックのように割れや欠けが生じやすい点には注意が必要です。磁石を選ぶ際は、磁力だけでなく、使用環境・温度・サイズ・コストまで含めて検討することが重要です。

用途に合ったサイズ・形状・グレードを選ぶことで、フェライト磁石のコストパフォーマンスを効果的に活かせます。

【マグエバー取り扱いのフェライト磁石についてはこちら】
https://magever.net/products/magnet-standard/#ferrite

この記事を書いた人

ライター

真尾 登
(さなお のぼる)

【略歴】
東海大学 理学部 物理学科卒業
株式会社NEOMAXフェライト退社
株式会社マグエバー勤務